270: 白い服の女の子 1/2 2015/03/14(土) 03:35:16 ID:p6mQ7RVc
当時、私は精神的に荒んでいて、よく大型バイクをかっ飛ばしたりしていました。
その日もバイクで走っていたのですが、広めの幹線道路は渋滞していました。
そこで、道の左端をすり抜けて進みました。
それなりに運転技術もありましたし、どうなってもいいやという部分があったので、危険だと知りながら、それなりのスピードが出ていました。

そして、渋滞している車が途切れている所へ来た時に、対向車線からファミレスに右折する車に、右側から当てられたのです。
車も急いで右折してスピードがあった為、かなりの衝撃でした。
今にして思えば一瞬のことでしたが、妙なスローモーションを見ている様な感じで、バイクに乗ったまま、私は電柱が正面に迫ってくるのが見えました。
その時、何か白いものが横から飛びかかってきて、私はそれに抱きつかれる様な感じでバイクから落ちて、道の脇にある歩道に転がりました。
転がるのが止まって、歩道に仰向けになっていると、その白いものは私の体から離れました。
それは白い服を着た女の子でした。
その女の子は「ふぅ」とため息を一つつくと、「あぶなかったね」と微笑みました。そしてスッと消えました。
私があまりの事に呆然としていると肩を軽く叩かれ、耳元で「あまり無茶をしちゃダメよ」という声がしました。
でも振り返っても姿はなく……
そうしているうちにぶつかった車の人が降りてきて、救急車が来て、病院に運ばれて……と。

私は足に軽い打撲があっただけで、ほとんど無傷でした。
事故の大きさと比べると、奇跡的といっていいぐらいに。
私のバイクは電信柱にぶつかり、グチャグチャに壊れていました。

後に警察に事情聴取に行った時、警官が「よくバイクから飛び降りられたな。そのまま突っ込んで、悲惨なことが多いんだが……」と。

私は飛びついてきた白い服の女の子を知っていました。
その事故の三年ぐらい前に交通事故で亡くなった、私の婚約者だったのです。
病院で息を引き取る時の最後の言葉。
「愛している、ずっと見守ってる」
その事が鮮明に思い出されました。

ほとんど外傷はありませんでしたが、バイクの破損具合などからもかなり大きな事故になってしまったため、念のためということで1日だけ検査入院をすることになりました。
その日の夜のことでした。
寝ている私の枕元に白い服を来た彼女が立ったのです。

「最後にお別れに来ちゃったよ。本当はダメみたいだけど昼間がんばったから特別だって」
そう言って彼女は微笑みます。
「私、突然死んじゃったからさ。なんかいろいろ整理つかなくて。あなたのこともすっごく心配だったし、未練がいっぱいになっちゃってたみたいでね。この世に残っちゃったの」
「……」
いたずらっぽく笑う彼女。
何か言葉を掛けたい、話したいこともたくさんあったはずなのにまるで言葉が出ませんでした。

271: 白い服の女の子 2/2 2015/03/14(土) 03:36:10 ID:p6mQ7RVc
「最初はこの世に留まれて嬉しい気持ちもあったんだ! でも、こんな不安定なまま永くいれないのよ、ホントは」
「……」
「でもあなたも危ない真似ばっかりしてるし、やっぱりあなたを見続けていたいし。
でも無理に留まって悪霊化していくのは絶対に嫌。でも成仏できない、みたいなわけわかんないことになっちゃってね」
こっちが訳わからんわ! と心でツッコンでみたが言葉にならなかったのです。

「そんな時寺生まれのTさんに会ったのよ。生者でも悪霊でもない私がなにフラフラしてんだ、って」
少しずつ彼女が透き通っていきます。
「ごめんね、私ばっかりお話して。へへっ、最後だから許してね」
どんどん薄くなっていく彼女。思わず手を伸ばしていました。
差し出して手を両手で優しく包んでくれる彼女。
感触はなかったけど、体温を感じたような気がしました。

「Tさんが私の未練が成就するまでは何とかしてやるって。それで何とか形を留めていられたの。
こんな美人の幽霊なんていないんだよ!ホントだよー」
彼女は涙を流しながら笑っています。

「私の未練はね。あなたよ。自暴自棄なあなた。投げやりなあなた。
なんとか幸せな自分の人生を歩いて行ってほしいと思ってた。
今日の事故! ホントにビックリしたよー。
でも救えてよかった。間に合ってよかった。
事故がきっかけでこうやってお話することもできたし」

もうはっきりと彼女の向こう側の景色が見えてしまいます。
「い、行かないで!」
そう訴える私に、彼女は寂しそうに、悲しそうに微笑みながら首を振ります。

「いつかきっと別れは来る。本当は三年前に来ちゃったよね。
あの時は悲しませてゴメンね。
でももうきっとあなたは大丈夫。ずっと見守ってきた私が言うんだからホントだよ!」
「っ……」
言葉になりませんでした。
もっと話をしたい。もっと声を聞きたいと思っていました。

「不安定で悪くなっていく私なんかあなたに見せられない。
もうこれ以上は正直難しい。
最後にもう一度だけ言わせて?
……愛しているわ」

涙が溢れてしまいました。視界がぼやけます。
もっと彼女を見ていたいのに涙が止まりませんでした

「それじゃTさん。三年間どうもありがとう。
送って頂けますか?
本当はもう限界なの」

彼女の視線の先、病室の入り口には一人の男が立っていました。
逆光になって顔は見えませんでした。

「あぁ、よく頑張った。
間違いなくあんたは天国に行けるな。
ちょっとゆっくり向こうで休んで、また還って来いよ!」
「はい」
「だ、だめ!彼女を連れて行かないで!」
「破ァッ!この野郎!
お前のそういう心が彼女を今まで引き止めちまってたんだろうが!」
「……」
「逝くべき御霊は引き止めちゃいけねぇ。
お前も……しっかりと彼女を見て、しっかりと送ってやるんだ」
「もう、Tさん! 脅かさないでよ! うっかり逝きかけちゃったじゃん!」
「破はっ、すまねぇすまねぇ」

彼女が私を抱きしめます。
まるでそこに存在しているように……いえ確かに存在ごと彼女を感じました。
「バイバイ……また……ね」
「うん、また……」

Tさんが手を翳しました。
「もう迷わねぇな」
「「 ハイ 」」

Tさんは頷くと低く小さいけどはっきりとした声で一喝しました。
「破ァッ」

青白い光が空間を満たします……。
笑顔の彼女が消えていく……。

…………。
……。


目が覚めると看護婦さんが忙しそうに歩きまわっていました。

実際のところ、私が見たのは幻覚なのかもしれません。
でも、事故の時に着ていた皮のジャケットが警察から戻ってきた時、歩道と擦れて傷だらけになった背中の部分に、細い腕と小さい手の形で、無傷の部分がくっきりと残っていました。

彼女を失って、自暴自棄になっていたのが続いていたのですが、その事故があってから、ちゃんと前向きに生きなければ、と。
あの夜彼女が残してくれた言葉を無駄にしないようにと。


元ネタ 白い服の女の子:http://chikatomo.doorblog.jp/archives/26708377.html


出典: 【破ァッ!!】寺生まれのTさんスレ