266: 巨頭オ 1/2 2015/03/14(土) 02:37:23 ID:p6mQ7RVc
61:本当にあった怖い名無し:2006/02/22(水)23:53:38ID:AUOziUfa0
数年前、ふとある村の事を思い出した。
一人で旅行した時に行った小さな旅館のある村。
心のこもったもてなしが印象的だったが、なぜか急に行きたくなった。

連休に一人で車を走らせた。
記憶力には自信があるほうなので、道は覚えている。
村に近付くと、場所を示す看板があるはずなのだが、その看板を見つけたときあれっと思った。
『この先○○km』となっていた(と思う)のが、『巨頭オ』になっていた。
変な予感と行ってみたい気持ちが交錯したが、行ってみる事にした。

車で入ってみると村は廃村になっており、建物にも草が巻きついていた。
車を降りようとすると、20mくらい先の草むらから、頭がやたら大きい人間?が出てきた。
え?え?とか思っていると、周りにもいっぱいいる!
しかもキモい動きで追いかけてきた・・・。
両手をピッタリと足につけ、デカイ頭を左右に振りながら。
車から降りないでよかった。
恐ろしい勢いで車をバックさせ、とんでもない勢いで国道まで飛ばした。

あれはヤバい。
俺の第六感が早鐘を打っている。一刻も早く見慣れた国道に戻りたかった。

……。
おかしい。

看板からデカ頭の村まですぐだった、はずだ。
もう国道が見えても、いや、もう着いていてもいいはずだ。

ブォーーーーン。
アクセルを必要以上にフカす。
狭い道で危険であるが、そんなことは気にしていられない。
どう考えてもデカ頭に追いつかれる方が危ない予感がする。

車を走らせる。
こんなに分岐があっただろうか?
この道さっきも通らなかったか?
おかしい。
おかしい。

おかしい!

その時だった、前方が開けている!
やった!戻れた。ホッと胸を撫で下ろす。額には嫌な脂汗をかいていた。
ふぅ、ほんと危なかったぜ。
車を減速する。
視界を遮りがちな茂った木々の先には……。

267: 巨頭オ 2/2 2015/03/14(土) 02:40:43 ID:p6mQ7RVc
……あの廃村が待っていた。
愕然としたまま停車する。道を……間違えた?

そんなはずはない!
間違えるような距離じゃなかった。
間違えるような分岐はなかった。

ドゴン!
頭上から音がする。

ドゴン!ドゴン!
続けざまに音が響く!

デカ頭だ……。デカ頭が俺の車に乗ってきてる!?

ドゴン!
ボンネットにデカ頭が飛び降りる!

両手を足に付けた奇妙な格好のままフロントガラスから覗き込む!
左右を見ると無数のデカ頭が……。

もうダメだ。
諦めにも似た感情で目を閉じる。
あの看板。
あそこで感じた変な予感。
信じればよかった。
妙な好奇心なんて従わなければよかった……。

車が激しく揺らされる!
窓ガラスがデカ頭で激しく叩かれ亀裂が生じる!

268: 巨頭オ 3/2 2015/03/14(土) 02:41:07 ID:p6mQ7RVc
「そこまでだ!」

その時だった。
後ろから人の声がする。

バックミラーを見ると、張り付いているデカ頭の隙間から坊主頭が見える。

あれは……、寺生まれのTさんだ!

「こんなところに結界を作って人を惑わす魍魎どもよ。
今日を持ってこんな異界は消し去ってくれるぞ!」

Tさんが頭上に手を翳す!

「破ァァァァァァァァァッ!!」

凄まじい雄叫びとともに空に放たれた青白い光弾は、空中で無数に分裂してデカ頭に降り掛かる!

「グギャ」
「グエ」
「ギャボ」
低く短い呻き声を上げてデカ頭は飛散していく!

「よっしゃ、これで終いだ!
破アアアアァァァァァァァッ!!」

Tさんは再び特大の光弾を頭上に撃ち上げる。

パリンっ!

空がっ!空が割れているっ!

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!!!
車の中にいるのも忘れて頭を抱えて目を閉じる!
車に空が降り注ぐ!!!


……。


静寂が訪れる。

コンコン。
運転席の窓をノックする音に顔を上げる。

「もう大丈夫だぜ、兄ちゃん」
「Tさん……来てくれたんですね。ありがとうございます!!」
「いや~、今回はたまたまよ!
国道を走ってたらよ、な~んか嫌な空気のとこがあんな~とか思ってたら、兄ちゃんの車がそっち入っていっちまったからよ、ちょっと追ってきてみたわ!」
「Tさん……」

まさかあの寺生まれのTさんが俺のためにここまでしてくれるなんて!
慌てて車を出てTさんに握手を求める。
ガッチリと握ったTさんの手は分厚くてとても力強かった。

周りを見回す。
さっきまでの鬱蒼とした森は消え去っている。
廃屋は一軒たりともなくなっていた。
遠目だがここからでも国道が確認できる。
なんだったんだ、さっきまでの世界は?

あれ?
Tさんの車がないな。

「Tさん、さっき国道を走っていたと行ってましたが……、……車は?」
Tさんは恥ずかしそうに俯く。
「いや、ちょっと5kmぐらい手前でガスが亡くなっちまってな、国道をダッシュしてたってわけよ!
それでちょっと兄ちゃんとこに着くのも遅くなっちまってな……」

そういうことだったのか。

「それであの……バイト代が来週入るんだけどな」
「は、はい!?」
「つまり今ちょっと手持ちがなくてだな。
ちょっと今日の除霊代として10リットルほど……」
「……。」

Tさんは本当に俺のために来てくれたんだろうか?
そんな一抹の不安を抱き、寺生まれって抜け目ない! と思いながら、Tさんを助手席に乗せてガソリンスタンドに向かったのだった。


出典: 【破ァッ!!】寺生まれのTさんスレ