706: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2014/11/06(木) 09:21:58.05 ID:fLTo/oL/0.net
このスレ読んでたら、以前立ち読みしたとある本の話思い出した 
短編集か何かだったと思うが 


「貴方が必要です」 
そんな手紙がいつからか、毎年同じ時期に町中の家に届けられるようになった。 
差出人不明の手紙は最初、悪戯か何かだと思われたり、ニュースにも成ったりしたが 
やがて受け取った人たちに、徐々に変化をもたらしていった。 

とある男は離婚した妻に電話を掛ける。「この手紙、君の?」「いいえ、貴方こそ……」 
その内話が進み、結婚当初の気持ちを思い出した二人は、よりを戻す決断をした。
喧嘩別れして家出した少年が、実家の親と会いたくなったり。
仕事に疲れたサラリーマンが、新人の頃を思い出して頑張ろうと思ったり。
多くの人が、大切な何かを胸の中に思い出した。自殺を思いとどまる人もいた。
「貴女が必要です」
そうだ、必要とされている。誰かに。その誰かも、誰かを必要としている。もしかして……
10年近くも続いた謎の手紙は、いつの間にかその町の年間行事になり、皆の心の支えとなっていた。

(続)

707: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2014/11/06(木) 09:23:00.09 ID:fLTo/oL/0.net
そんなある日、一人の作家の元へ「さる重要人物の代理」と名乗る人物から電話がかかる。
好奇心から取材を了承すると、高級車に乗せられ、豪華な屋敷の寝室で一人の老人に面会した。
有名な資産家の男だった。

彼はその作家が例の手紙について本を出そうとしている事を知り、
「あれを書いたのは私だ」と告白するために呼び出したのだった。
若い頃、事業に失敗して自棄になっていた時、新聞の一言欄に
『大丈夫よ、心配ないわ。母より』という言葉を見つけた。
偶然宛先が同じ名前の別人とは言え、幼い頃に亡くなった母から激励されたような気持ちで、
それから奮起して大成功を収め、今の富を築いたという。
有り余る金を慈善事業につぎ込むよりも、たった一言の大切な思いを皆に伝えたい。
そして、老人は作家に自分が余命幾ばくもない事。あの手紙も今年で止める事。
自分が死んだ後になら、今の話を公表しても良いと言って、静かに目を閉じた。

作家が招かれてから一週間後、あの老人の死が小さな記事として新聞に載った。
そして数日後、あの手紙が町中に届けられる。
文面はわかりきっていたが、それでも町中の人はその手紙を心待ちにしていた。
事実上最後の手紙と分かっている作家は、特に感慨深い気持ちで封を開き―――

―――自分の目を疑った。そして、あの老人の本当の目的に気づき、その場に崩れ落ちた。

老人の最期の手紙は、例年通りただ一文。しかし例年とは異なっていた。
乱暴に書きなぐった、大きな字で



「 お 前 は も う 不 要 だ 」

708: 本当にあった怖い名無し@\(^o^)/ 2014/11/06(木) 09:23:40.37 ID:fLTo/oL/0.net
以上です。この後この町で何が起こったか……想像したくもないです

出典: 後味の悪い話 その153