562: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 00:10:27 ID:Hn7qsygZ0
俺が過去経験した話を。
ただ、あまりにも現実離れしてるんで、自分でも微妙に信じ難いところがあるんですが…。かなりの長文ですので、読み飛ばして頂いても結構です。 

中学時代、夏休みを利用して友達と川釣りに行こうって話になりました。
夜中の午前3時頃に集合、市街地からひたすら自転車をこいで約3時間、目的の川に到着しました。 

早速皆で思い思いの場所に散って釣り糸を垂れましたが、サッパリ釣れません。 
ポイントを変えてみるも、やはり駄目。なので、私は徐々に皆から離れて上流へと移動していきました。 

そして、自分が釣れそうだと思うポイントを見つけて釣り糸を垂れていると… 
背後から、川原の石を踏む音がしました。最初は「仲間の誰かが、やっぱり釣れなくて移動してきたのかな?」程度に考えて無視してたのですが、足音は私の背後で止まったまま、動こうとしません。
「なんだ、釣らないのか?」と言いながら振り返ったのですが…。

563: 562 2005/03/27(日) 00:11:10 ID:Hn7qsygZ0
そこには誰も居ませんでした。更に周囲を見渡すも、居るのは自分1人です。
「あれ?気のせいかな…」
そんな事を1人で呟きながらも釣りを続行しましたが、やがて再び場所を移動し
ようと考え、更に上流へと歩き始めました。

『ここいら辺じゃ駄目だ。今度はずっと奥の方まで移動してやろう』
そう考えながら、川沿いを若干早足で移動します。すると今度は、私の背後を付いてくる足音がします。
「なんだ、お前も移動すんの?」
と言いながら、また後ろを振り返りました。

すると、今度は確かに人が居ました。ですが、それは友人ではありません。
年の頃は15~16でしょうか。少年が1人、私のすぐ後を歩いてきます。
私が思わず歩くのを止めると、向こうも止まって私の顔を無言で見つめ返してきました。

「なんだか変わった服を着てるなぁ」
というのが、私の第一印象でした。
下半身はズボンに近いものを履いているのですが、上半身は裾の短い着物を着ています。
腰には地味ではあるが、立派なナイフ…と言うより、短刀(短剣?)のようなものをぶら下げています。

私は彼を見ても全然驚きませんでした。近くで映画の撮影でもやってるのかと思ったのです。
今から考えると、あんな田舎の山奥で映画の撮影なんてやってる筈がありません。
それでも、当時の私はそう考えました。

何故そう考えたかと言いますと、まず彼の衣装が、確実に現代のものではない事。
また、背中にまでかかるぐらいの黒い長髪をしていました。
更に、これは私の主観が入ってしまうのですが、その少年がかなりの美形で、俳優と思ったからです。
美形とはいっても、ジャニーズ系のような顔とは違うタイプです。
意志の強そうな顔、と言えばいいでしょうか。そんな感じの顔でした。

564: 562 2005/03/27(日) 00:11:50 ID:Hn7qsygZ0
「映画の撮影?どっから来たの?俺が釣りしてると邪魔?」
私は彼に聞きましたが、何も答えません。
少々困ったものの、『こっちだって朝早くに起きて釣りしてるんだ、一匹でも釣らないと割に合わない』と思い直し、さっさと上流へ歩を進めました。

やがて、かなり上流まで到達した私は喉が渇き、腹も減ってきたので携行してきた食料を食べる事にしました。適当に腰を下ろし、自分で作った握り飯を食べていると、下流から人が歩いてきます。
さっきの少年でした。

私はどう声を掛けて良いか分からず、黙々と握り飯を食べていました。
少年は私のすぐ近くに腰掛けると、こちらを興味有りげに見ています。
『なんなんだよ、気味悪りぃな。言いたいことがあるならさっさと言えよ…』
内心ではそう思いつつも、当たり障りの無い事を話し掛けました。
「もしかして、釣りに来たの?」「その服、どこで売ってるの?」「他に一緒
に来てる人は居るの?」
…全て無言で返されました。

やがて、彼の視線が私の持っているペットボトルに注がれているのに気付きました。
事態の打開を図りたいと思っていた私は、「喉渇いてる?あげるよ?」 と言って手渡しました。

彼はペットボトルを手に取ると、それを太陽に向けて光の反射を楽しんでるようでした。
『変わった奴だなぁ…』と思っていると、今度は向こうが私に茶色の塊を差し出してきました。
どうやら食べ物らしいというのは分かったので、一口齧ってみました。

少々粉っぽいが、僅かな甘みがある。決して不味いものではありませんでした。
「美味しいねぇ、これ。自分で作ったの?」と言うと、初めて「うん、そう」 と答えてくれました。

565: 562 2005/03/27(日) 00:15:58 ID:Hn7qsygZ0
それからは、彼も徐々に話してくれるようになりました。
腰のナイフを褒めると、とても喜んで見せてくれました。
両刃のもので、やはりナイフというよりは短剣でした。
若干青く光っていて、よく手入れされてる感じがしました。
どこで買ったのか聞くと「譲って頂いたもの」と、誇らしげに言いました。

彼の話はまだ続きます。
その殆どは山の話でした。
そして、この山がいかに豊かな山であるか、を私に聞かせました。
他にも、怪我で動けなくなった人に手当てをしてあげたとか、山に迷い込んで泣いてる子供を助けてあげたとか、この山に逃げてきた男女を匿ってあげたとか。

今考えれば、きっと古い時代の話なんだと思います。
「草履も脱げて…」という一節があったので。
ただ、その時は珍しい話に聞き入るあまり、突っ込みを入れるのを忘れていました。

どれぐらい話していたか…突然、「そろそろ行かないといけないから」と言って彼は立ち上がりました。
別れ際に彼は「今日はすまない。だが、明日もここへ来てみてくれ」と言い残し、上流へと歩いて行ってしまいました。

結局、その日は一匹も釣れませんでした。他の友人は、小ぶりながらも何匹か釣っていたというのに。
そして、友人達にこの話をしたものの、誰もその少年は見ていませんでした。

家に帰った私は、両親にこの話をしました。母親は「それって変な人なんじゃないの?」といった感じでしたが、父親は黙って聞いてくれて、「じゃあ、明日そこに行ってみようか」と言ってくれました。
元々山好きな父親(私が山好きになったのも父親の影響)なので、まともに相手してくれたのかも。

566: 562 2005/03/27(日) 00:16:30 ID:Hn7qsygZ0
次の日の朝早く、父親の車でその川まで向かいました。
自転車だと3時間掛かる道程も、車だとあっと言う間です。
川に着くと、早速上流へと登り始めました。
やがて、昨日少年と話した辺りに辿り着きました。

私と父親は早速釣り糸を垂れました。が、やはり釣れません。
『なんだ、やっぱり駄目じゃないか…』と思った時。竿に強力な当たりがきました。
「川魚でこんな強力な引きなんて、おかしいぞ?」と思いながらも、何とか引き上げてみると、何と1尺超えの岩魚でした。

それからは、面白いように岩魚が釣れました。しかも、その殆どが1尺前後のものばかりです。
最終的には、8匹もの岩魚を釣り上げました。
自分で釣り上げたとはいえ、信じられない出来事に唖然としてると、父親が 「頂いたからにはお礼をしないと」と、帰り際に山の麓にある小さな祠のような場所へ、一升瓶のお酒を置いていました。

この出来事から何年も経ちましたが、未だに彼が何者だったのか分かりません。
聞く所によれば、山の神様は通常、女性なんですよね?それが男性、しかも少年というのは聞いたことがないので…。

東北某県、某山の神様は少年ってことなんでしょうか。


567: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 00:34:53 ID:lFjQOoBe0
超かっちょいい話!

577: 562 2005/03/27(日) 06:38:18 ID:Hn7qsygZ0
>>567-573さん
レス、ありがとうございます。この話は何度か友人達にしたことがあるのですが、「ちょっとアレな人だったんだよ、それ」と一笑に付されてしまっていたので、何だか嬉しいです。

575: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 05:53:26 ID:Rvt6wmrP0
単にタイムスリップした人かと思った自分って夢が無い?

576: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 06:22:46 ID:+MeQS+lU0
>>575
単に・・・
なんか分かんないけど、あんたスゴイ。

578: 562 2005/03/27(日) 06:47:23 ID:Hn7qsygZ0
>>575さん
相手の少年も普通に現代語(多少、かしこまった言い方ではあったけれども)を話していたので、それは多分無いと思います。
でも、そういう考え方も面白いですよね。

571: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 01:04:33 ID:b1zitQqc0
>>562 
感動した。その後はそこに行ってないの?

577: 562 2005/03/27(日) 06:38:18 ID:Hn7qsygZ0
>>571さん 
この出来事の後、何度か行きました。けれど、少年に会ったのは一度きりです。
それでも、行く度にお供え(日本酒とペットボトル入りの清涼飲料)はしています。特に、ペットボトルはお気に入りだったみたいなので(笑 

ちょっと追記ですが、少年は山の話と短剣の話の時は、とても生き生きとしていました。「短刀を譲ってくれたのは誰?」と聞くと「あちらに居られる」と、その地域では代表的な山を指し示しました。 
意味が分からず「立派そうな短刀だし俺も欲しいんだけど…まだあるのかな?」 
という質問には、笑うばかりで答えてくれませんでした。 

こんな遣り取りの間も、少年は短刀を空にかざしたり、太陽の光を反射させたりしていました。誉められたのが余程嬉しかったんだと思います。 
兎に角、綺麗な短刀でした。一流の刀鍛冶が打った刀は神聖な感じがしますけど、丁度そんな感じを受けました。
淡い青色の光を放つ刀身は、未だに忘れられません。 

その時、私も登山用としてナイフは携行していたのですが、近所のホームセンターで買った安物でした。
なので、とても見せる気にはなれませんでした。 

それにしても、昔話に聞く山の神様(女性の場合)は美人が多いみたいですけど、男性の場合でもやはり眉目秀麗なんですね。男の私でも、思わず見とれる位でしたから(俺はゲイじゃないですよ)。 

できればもう一度会ってみたいですが、神様はそうそう簡単に現れるものではないし、多分無理だと思っています。
しかし、生涯忘れない良い思い出です。

574: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 05:33:45 ID:+MeQS+lU0
きっと>>562さんの対応が良かったんだね。 
岩魚の塩焼き食べたいw

578: 562 2005/03/27(日) 06:47:23 ID:Hn7qsygZ0
>>574さん 
どうでしょうか…神様相手に「短刀が欲しい」だの、「その服どこで売ってるの?」だのと、変な要求や質問してたので…。きっと、心の広い神様だったのではないかと思います(笑。
ちなみに、岩魚は脂が乗ってて美味しかったです。 

582: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 08:42:32 ID:RVvT3D8h0
>>562 
すてきな話ありがとね、その美しい少年は山の神様の眷属であられるような 
あなたはとても綺麗な心の持ち主でしょうね 

584: 本当にあった怖い名無し 2005/03/27(日) 09:46:24 ID:/sEif3bd0
>>562 
両刃の短剣ってサンカの持っていたウメガイってやつじゃないか? 

umegai71



631: 562 2005/03/31(木) 07:56:28 ID:7JSn77uQ0
>>582-584さん 
遅レス、申し訳ありません。 

確かに彼は、神様の使いかも知れませんね。神様そのものなら女性だと思いますし
(私が彼に会った山の神様は女性だそうです)。 
きっと、神様に何かの用事を言い付けられて行く途中か帰る途中に、魚が釣れなくて文句垂れてる私を、見るに見かねたんじゃないかと思います(笑 

あの後、「ウメガイ」について調べ、画像も見ました。
しかし、多分違う種類だと思います。ウメガイは柄に近付くにつれて幅広になるみたいですが、私が見た 
ものは柄の部分に至るまで、一定の幅を保っているものでした。 

これだけだと何なので、もう1つ話をさせて頂きたいと思います。
ただ、この話は自分の体験ではなく人から聞いた話です。
本当なら実体験の方が良いのですが、私が体験した話といえば>>562の話ぐらいなので…。 


私の父親は山好きです。
当然、山関連の友人も多く、私も山へ行く度にそうした方々と話をしました。そして、その友人の中にAさんという方が居ます。
私が彼と最後に話をしたのは高校生の頃です。
高校卒業後、進学の関係で地元を離れてからは一度も会っていない上、結構な年齢に達していた筈なので今は亡くなってしまっているかも知れません。 

Aさんは県内でも山深い山村の出身で、実に色々な話を知っていました。私にも沢山の話を教えてくれましたが、その中でも印象深い話をさせて頂こうと思います。


632: 562 2005/03/31(木) 07:57:33 ID:7JSn77uQ0
Aさんが少年の頃(戦前)、罠を仕掛けては狸や狐、イタチなどの小動物を獲っては皮を剥いで売っていたそうです(当然、今では許されない事だと思いますが)。
そんなある日の事。Aさんはいつものように仕掛けた罠を見回りに、山へと入りました。

「獲らぬ狸の皮算用」をしていたAさんですが、その日の収穫はゼロ。すっかり気落ちしたAさんは、元来た道を引き返し始めました。
ところが。『通いなれた道、目を瞑ってでも帰れる』自信のある山道であった筈なのに、周囲の風景がまるで違うのです。
「どこかで道を間違えたのか?いいや、そんな筈は無いんだが…」
Aさんは見覚えのある道を探し始めました。

が、行けども行けども知らない場所ばかり。そうこうするうちに日も暮れ始めました。
「これはいよいよマズイぞ。下手をしたら、山で夜を明かさないといけない」
何とか元の道に出ようと必死になりましたが、全ては徒労に終りました。

すっかり暗くなった山の中でAさんは途方に暮れました。
ところが…。
耳を澄ませると、どこからか人の話し声が聞こえる。
最初は幽霊か何かと思ったのですが、よくよく見渡せば遠くに灯かりも見える。
「しめた!人が居る!今日はあそこに厄介になろう」
Aさんは灯かりを目指して歩き始めました。

やがて、灯かりのすぐ目の前まで来たAさん。焚き火がチロチロと燃えています。
焚き火を起した主に事情を説明しようとしたのですが、そこで言葉に詰まってしまいました。

633: 562 2005/03/31(木) 07:58:15 ID:7JSn77uQ0
焚き火の前には、2人の人が居ました。
どちらも女性で、焚き火を挟んで向かい合い、何事かを話しています。2人はとても美人で、豪華な着物を着ていました。
『綺麗なのは大変結構なんだが…でも、どうしてこんな山の奥に、女性が2人きりで居るんだろう?』

何も話せずに突っ立ってるAさんに、片方の女性が
「そこでは寒いでしょう、近くで当たりなさい」
と優しく声を掛けてくれました。
Aさんは無言で火の近くに行くと座りました。2人は相変わらず話を続けています。
そこで、Aさんは変な事に気付きました。

目の前の焚き火なのですが、確かに燃えている。
燃えてはいるが、薪が無い。
また、音も全然無い。
ただ、地面の上で火が燃えてるだけなのです。
『こんな火などあるものか。きっと、この2人は人ではない。狐か狸か知らんが、きっと化かされているのだ…これは大変な所へ迷い込んだものだ…せめて、怒らせないように気を付けないと』

さっきまでは「人が居て助かった」と思っていたAさんは、急に心細くなりました。
兎に角、目の前の2人は人でない事は確かだ。下手をすれば命まで取られかねない…。

すると突然、「お前は、○○の所のAでしょう?」声を掛けられました。
先程声を掛けてきた女性が、いきなり話し掛けてきたのです。
『何で俺の事を知っているのだ…』
内心ビクビクしながら、正直に答えようかどうか迷いました。
『正直に答えたら喰われてしまうかも知れん。何せ、今まで俺は結構な数の狸だの狐の皮を剥いでるんだ。こんな所で仲間の敵討ちなどされたら、逃げようが無いじゃないか』

「隠さなくても良い、こちらはお前の事をよく知っている。お前の父や母の事も、よく知っている」
Aさんは何を言われているのか全然分かりませんでした。
俺の父親や母親を知っているってどういう事だ。

634: 562 2005/03/31(木) 08:01:44 ID:7JSn77uQ0
「あまり子供を驚かせるものじゃない。見なさい、怖がってるでないの」
もう1人の女性が、答えに詰まっているAさんを見かねてか、助け舟を出してくれました。
彼女は続けて話します。
「私達に化かされていると思ってるみたいだけど、決してそんな事はしないから安心しなさい。明るくなってきたらね、道を1つ越えて更にずっと下りなさい。そうすれば、村への道に出られるから」

何とかAさんは声を出しました。
「何で俺の事を知ってるんですか?二人は誰?」
すると、2人はそれぞれ名前を言いましたが、やたらと長くて難しい名前でした。
「立派な名前ですね」
と言うと、二人は笑って返しました。
そして、「私達は皆、こんな名前だから」 と言いました。

やがて、夜も明けてきました。
すると、 「そろそろ山を下りなさい。さっきも言ったけれど、ここを真っ直ぐ下りなさい。途中で細い道があるけれど、それを行ってはいけない。その道を越えて、更に下へと下りなさい」

「その細い道は何の道なんですか?」
とAさんは質問しましたが、
「知ってもしょ うがない事だから」と返されるだけでした。
2人に別れを言い、Aさんは山を下り始めました。
下りる途中、後ろを振り返りましたが、既に灯かりは消えて人の気配も消えていたそうです。

女性に言われた通り山を下ったAさんですが、さっき言われたような細い道が見えてきたそうです。
『ここを下った方が、早く山から出られそうなんだけどなぁ…』
そんな考えが頭を過ぎります。
「行っては駄目だと言われたけど、見た目は全然普通の道だし、この道を下ってしまおう!」

635: 562 2005/03/31(木) 08:02:50 ID:7JSn77uQ0
そう思って踏み出そうとした時です。道の奥から人が1人歩いて来るのが見えました。
『なんだ、俺以外にも人が居るじゃないか。やっぱりさっきの2人は狐か狸だ。この道を無視して更に下ったら、滝壺なんかがあるに違いない。危ない危ない、騙されるところだった』

そう思いながら、道を歩いて来る人に声を掛けようとしたAさん。
が、相手の姿を見て絶句してしまいました。
見た目は確かに人でした。
そして、昔の貴族の従者が着てるような狩衣を着ています。
しかし、Aさんが驚いたのはその人の服装ではありません。

その狩衣を着た人物。
袖から出ている手足に皮膚も無ければ肉も無い。要するに白い骨が剥き出しになっていました。また、顔には目の部分だけに穴を開けた木の面を被っています。その下も白骨であろう事は、当然予想できました。

そいつがフラフラと道を歩いて来る。
『何故白骨が歩けるんだ。これこそおかしいじゃないか』
Aさんは、とっさに茂みに身を隠しました。逃げようとして下手に動くより、藪に隠れてやり過ごそうと考えたのです。

その白骨は、相変わらずフラフラと歩いてきます。そして、よくよく見れば何かを引きずっているようでした。
その引きずってる物を見て、Aさんは再度仰天します。

636: 562 2005/03/31(木) 08:04:16 ID:7JSn77uQ0
足に縄を掛けられた白骨でした。しかし、引きずっている奴が狩衣を着ているのに対して、引きずられている白骨は立派な着物を着ています。
恐らく、貴族か何かなのでしょう。

Aさんが推測するに、狩衣の男は主殺しをしたのではないか、との事です。
ここで言う「主」とは引きずられている貴族風の白骨。
その従者たる男はその罪の為に死罪となったのではないか…。

が、当時のA少年はそんな事を考えるほど余裕がありません。
ただただ、『頼むから気付かれませんように…』と願うのが精一杯でした。
やがて、その白骨はAさんの隠れている茂みの前までやって来ました。
そして、そのまま通り過ぎてくれるかと思いきや…そこで立ち止まって周囲を見渡し始めました。

『しまった!気付かれたか…』
狩衣の白骨は、縄を持つ方とは逆の手を、そろそろと腰の刀に伸ばします。
もはや、一刻の猶予もなりません。見付かるのは時間の問題であるように思えました。
いや、既に見付かっているのかも。
『じっとしていても見付かる。ここはイチかバチか…やるしかない』

637: 562 2005/03/31(木) 08:08:57 ID:7JSn77uQ0
Aさんは声にならない声を挙げながら藪から飛び出し、一足飛びに道を飛び越えて、転がるように山を下り始めました。
後ろからは刀が空を切るような音がしましたが、振り返る勇気などありませんでした。

躓いたり転んだり、枝に顔を打たれたりしながらも必死に山を下り、気付けば自分の住む村のすぐ近くの道に出ていました。
日はすっかり昇っていましたが、それでも安心できずに村まで駆けて行きました。

村では、「Aが消えた、神隠しにでも遭ったのではないか」と話し合ってる最中でした。
Aさんは事の次第を両親に話したそうです。
それを聞いた両親は「山の神様が息子を護って下さった」と大層喜んだそうです。
また、2人の女性が話した「自分の名前」ですが、1つは村の近くにある山、もう1つは少々遠方だが有名な山に
居る神様の名前ではないか、との事でした。

狩衣の男と貴族の白骨に関しては、両親も全く知らなかったそうです。
Aさん自身も色々調べてみましたが、結局分からなかったそうです。
もし、Aさんが女性の言う事を聞かずに最初の道を行ったらどうなっていたか、 もし、狩衣の男に捕まっていたら…全ては闇の中です。

Aさんからは他にも色々と話を聞いているのですが、時間に余裕ができたら少しずつ書いてゆこうかと思っています。
長文、失礼しました。

646: 本当にあった怖い名無し 2005/03/31(木) 19:10:27 ID:j3GTBz1QO
>>632-637乙です。
日本昔話を思い浮かべて読んでいました。
また不思議な話を読ませて下さい。

638: 本当にあった怖い名無し 2005/03/31(木) 08:21:01 ID:S0Kh8+xPO
>>632-637
GJ!!
もう一つは黄泉への道だったんでしょうか?
後日その人は罠を仕掛けなくなったとか?

640: 本当にあった怖い名無し 2005/03/31(木) 09:34:59 ID:p6UhZb7g0
562さん、お話しありがとう!
その場の情景が浮かぶようです。
またお時間のあるときにでも是非書き込んでくださいませ。
すごく楽しみです。

出典: ∧∧∧山にまつわる怖い話Part18∧∧∧