543: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 21:58:00 ID:RwbrDT0E
このスレのタイトル通り、死ぬほど洒落にならない恐い経験しました。 
長文ですが、叩かるの覚悟で。 
今から5~6年前に私自身が経験した話。


544: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 21:59:00 ID:RwbrDT0E
蒸し暑い8月のその夜、TAXI運転手の私は、空車で待機中でした。
その日の22時を過ぎた頃、事務所の電話が鳴りました。
いつもの常連客のAさんで、今から飲みに行くから自宅まで迎えに来いとの事。
私の住んでいる町は田舎です。
もちろん飲み屋の2~3軒はありますが、この日は車で
小1時間掛かる繁華街へ行くという。
いつもなら売り上げを思い喜ぶ私も、この日は何となく
気が重く面倒くさいなと思いつつも常連さんだし…
そんなこんなで、繁華街へ到着。
するとAさんが1時間程待ってくれとの事。
このまま空車で帰るよりは、と思い待つことに。
約1時間後、また別の店へ行くことになり、そこでまた小1時間。
ようやく気が済んだのかAさんは上機嫌で帰宅することになりました。
車が走り始めて10分程でAさんはイビキをかきはじめました。
ミラーで見ると座ったまま眠っています。

545: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:00:00 ID:RwbrDT0E
車が揺れる度に体が傾き、とうとう横になり完全に爆睡です。
常連さんなので自宅もわかるからいいかっと思いつつ自宅到着。
ここまでの料金2万5千円。
思いも寄らずの高売り上げに内心喜び、
後はAさんを降ろして本日の業務終了です。

私  「Aさん、着きましたよ」
Aさん「Zzzzzzz・・・」
私  「Aさん、着きましたよ、Aさん!!!」
Aさん「ん、がっ、Zzzzzzz・・・」

全く起きそうにありません。

546: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:01:00 ID:RwbrDT0E
こういう時は色んなトラブルを避ける為にお客さんの体に
なるべく触れないようにしていますが、仕方ありません。
私は車から降り、左後部ドアを開けると運転席の真後ろ側に頭を向けて、
横向きでAさん爆睡中です。
体を揺らしながら声をかけるも全く起きそうにありません。
時間は午前2時30分過ぎ。田舎のなかの1軒家、周りは田んぼだらけの真っ暗闇。
おまけに20メートル先には墓地。
田舎にはよくありがちな光景です。
そんなシチュエーションも手伝って、
気のせいか何かの気配を感じます。
それが何かはわかりません。絶対気のせいでしょう。
私は怖くなり、一刻も早くこの場を立ち去りたい気分になりました。
家にはAさんのご両親が就寝中ですが、この時間に起こすのも
非常識すぎると考えた私は、とりあえず座らせようと思い、
Aさんの左腕を引っ張り起こしました。

547: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:01:00 ID:RwbrDT0E
起こしたのも束の間、再び倒れこむ始末。
とにかく起こさないと私も帰れません。
再び左腕を引っ張り起こし、
今度は左腕を持ったままAさんの肩を揺らしながら叫びました。
「Aさん!家に着きましたよっ!Aさんっ!!Aさんっ!!!」
当時の私の乗っていたTAXIは年式が古く、
ルームランプも非常に暗く、特に車内の足元などは見えない位です。
かなり強く肩を揺すったせいか、Aさんの首は無気力に私の胸に寄りかかってきました。
若い女性ならまだしも、Aさんは40半ばのバツ1のおっさんです。
酒臭さと気持ち悪さでAさんの頭を起こした、その時です。
黒い何かがAさんの頭あたりをモソッと動きました。
えっ??と思いましたが暗くて何かわかりません!
そーっとAさんの左腕を離すと再びその黒い何かが少しずつAさんの頭から左頬に
かけて、ズルッ・・ズルッとゆっくり這うように動いているのです!!!
「!!…!…」

548: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:02:00 ID:RwbrDT0E
本当に怖いときは声も出ないと聞きますが、まさに私は恐怖で声が出ず、
そのまま後ずさりして尻餅を突いてしまいました。
その間も、「黒いそれ」は気味悪くズルッズルッとAさんの
耳から肩をめがけて動いています。
得体の知れないモノへの恐怖で私は思わず走り出しました。
とにかく振り返らず一直線に全速力で。
50メートル程走ったところで振り返ると私のTAXIが見えます。
ぼんやりとルームランプがAさんを灯しています。
Aさんが気になります。それに私自身そこから歩いて帰れる距離ではありません。
携帯電話も圏外です。泣きそうになりながらも、様子を見ながらゆっくりと車まで戻ること
にしました。そうするしかありません。
「頼む!これは夢や、夢であってくれ」
私は蛙の鳴き声にも異常に反応しながら1歩ずつ車に近づきました。
ようやくAさんがはっきりと確認できる距離に来ました。
やはりあるのです、黒いそれが・・・

549: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:03:00 ID:RwbrDT0E
恐怖で体が震えて涙で目が潤みます。
しかし私の大切なお客様、放っては置けません。
なるべく刺激しないよう、足音を立てず、そーっと間合いを詰めました。
どうやらその物体はAさんの首から肩のあたりで
ジッとしていて動いていません。
おまけに恐怖心と薄暗さでそれが何かもわかりません。
Aさんは相変わらずシートに座ったまま
首を運転席側に倒し、ピクリともしません。
しかし車までの距離はまだ10m程ありそれ以上怖くて近づけません。
とっさに庭先に立てかけてあった
柄の長いホウキが目に入りました。
ホウキを手に取り、いつでも逃げ出せるように半身の体制で、
さらに近づき、黒い物体に気を使いつつ、
その柄でAさんの左腕の辺りを軽くつつきましたが、
反応ありません。

550: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:04:00 ID:RwbrDT0E
もう一度、今度はより強くつつきました。
すると今度は黒いそれがAさんの胸の辺りから太ももにかけてズルルルッと
すべり落ちるように動きはじめたのです。
と同時にそれまで動かなかったAさんが「うぅ~っ」と
低いうなり声をあげてこちら側に向いたのです。
Aさんの顔を見たその瞬間、再び私は走り出していました。
違う!違うのです。Aさんじゃない!!!
私のTAXIに乗っていたはずのAさんが、いつの間にか見た事も無い、
目つきの悪そうな初老の男性に変わっているのです。
「何やのんっ?何やのん一体、どないなってんねん!?」
全身から汗が噴出し、着ているシャツもビチョビチョになりながら、
先程走りついた辺りまで来た時、恐る恐る振り返りました。
汗と涙で良くは見えませんが追ってはきてない様子です。
私は緊張と疲れが押し寄せて、その場に座り込んでしまいました。

551: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:05:00 ID:RwbrDT0E
呼吸を整えて気を落ち着かせるためにタバコでもと思い、
胸ポケットに手をやるとタバコが汗でグチャグチャです。
それでも何とか一本取り出し震える手で火をつけて深く一服。
頭の中はパニックです。
「あれは誰?Aさんは?
あの黒い生き物何?何がいったいどうなってんねん???」
暗闇に目が慣れたせいか、さっきまでは見えなかった田んぼのあぜ道が
うっすらと見えました。
どうやら遠巻きに私のTAXIの反対側に行けそうです。
意を決してそこから行ってみる事にしました。
あの黒い物体が飛び掛ってきたらどないしようとか、
あの男性とどこから何をどう話したらええの?
とか考えつつTAXIの反対側へ。
恐る恐る窓から覗いて見ると、
その見知らぬ男性は横になって寝ている様子。
横顔が見えます。

552: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:05:00 ID:RwbrDT0E
そこからは黒い生き物の姿が見えません。
今度は運転席の窓から覗いて見ると、いました!黒い物体が!
その男性の股間辺りに!しかし動いていません。
次の瞬間今度はその男性が寝返り、仰向けになりました!
眉間にシワを寄せて不機嫌そうに眠るその顔!!!!!
一瞬ビビッて窓から顔を引っ込ませる私・・・
再び覗くと何とそこには!!!!!

553: 本当にあった怖い名無し 2004/08/23 22:08:00 ID:9tK4Ldpw
落ちがすぐわかったよ・・・orz

554: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:09:00 ID:RwbrDT0E
Aさん!?!?!?!?
ドアぎりぎりに頭をくっつけて寝ている、間違いなくAさんです!
私が安心したのも束の間、いきなりAさんが起き上がり、
寝ぼけながら座り、眩しいのか眉間にシワを寄せ、
一瞬私と目が合いましたが、しかし再び深い眠りへ。
「ゲーーーーーーーーーーーッ」
何とそこに座ったのは再び
「見知らぬ初老の男性?????」
いやそれは
「見知らぬ初老のAさんっっっっ!!!」
しかも
「ハ、ハ、ハ、ハゲてるAさんっっっ・・・!!!」
と言うことは、あの黒い物体の正体は
「ズ、ズ、ズラーーーーー!!」
Aさんとは夜飲みに行くときしか会うことが無く、
明るいところで会った事がありません。

555: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:09:00 ID:RwbrDT0E
いつも私は車内でAさんは薄暗い外。
しゃべるときもミラー越し。
まさかズラなんて思ってもみません。
わかりますか?
こんな深夜に、それも何の心構えもなく、
目の前でズラが外れて落ちて行く瞬間、
それがズラだなんて誰が想像できるでしょう。
顔も年齢も全く別人に、リアルに変わって行く、
その瞬間の恐怖と慄き・・・
それは何物にも変えがたい最恐の瞬間でした。
さらに緊張は続きます。

556: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:10:00 ID:RwbrDT0E
今Aさんが目覚めれば、
お互い気まずくなるのは目に見えている。
しばらく考えた私はAさんの股間で、
情けなくギャランドゥしているそのズラを、
親指と人差し指でそーっとつまみ、
本来あるべき場所に返してやりました。
が、前も後ろも本来の向きも分かるハズなく
とてつもなくヘンテコリンな姿に…
その瞬間緊張の糸がプッツリ切れて今度は笑いをこらえるのに必死です。
結局Aさんはそのまま起きず、
仕方なくAさんのお母さんに起こしてもらう事に…
そのときも
「Aちゃん、Aちゃん起きなさいっ」
と揺する度にズラが滑り落ち、
その度にお母さんがチラッチラッと
私の様子を伺っていたあの姿を今でも忘れません。

557: さすらいのTAXIの運ちゃん 2004/08/23 22:11:00 ID:RwbrDT0E
代金はお母さんが立て替えてくれました。
その後、未だにAさんからお呼びが掛かりません。
長時間お付き合いいただき、ありがとうございました。

出典: 洒落にならないくらい怖い話を集めてみない? 78