79:金庫1:04/06/0716:24ID:PjB8UNTL
俺が小学三年生のときの話。

俺は東京生まれ東京育ちの江戸っ子なんだ。
父も母も島根の出身で、夏休みのある日に母方の実家に帰った。
久しぶりに会うじいちゃんとばあちゃんは、孫がかわいくて仕方ないらしく、俺と弟をしきりにかわいがってくれた。


その家は特に変わったところのない、ちょっと大きめの一軒家だったが、一つだけおかしなものがあった。
(当時の俺の目には奇妙に映った)
それは、居間にある金庫だった。
まぁ電子レンジくらいの大きさの、普通のダイヤル式の金庫なんだが、神棚の下に仰々しく置いてあった。
まるで金庫を祀っているように。


80:金庫2:04/06/0716:25ID:PjB8UNTL
子供というのは何でもいじりたがるもので、俺も御多聞に漏れず、その金庫を開けようと躍起になっていた。
その様子を止めるでもなく、じいちゃんは目を細めて見ていた。
居間に入ったばあちゃんが、
「ちょっとおじいさん!○○ちゃんが……」
なんてことをじいちゃんに言ってたが、
「どうせ開かんよ」
みたいな感じで、じいちゃんは放任していた。
じいちゃんに
「開けてよー、一億万円入ってるの?」
とか言ってみたが、
「こりゃ壊れとるんだ。じいちゃんにも開かん」
などとはぐらかされた。

俺も次第に飽きてきて、他の遊びをするようになった。
じいちゃんに、
「明日はイカ釣りに連れてってやるからな」
と言われた。

その日の夜、新鮮な魚をふんだんに使った料理が食卓に並べられ、東京で売ってる魚よりも格別にうまい魚料理を食った。

大人たちは酒を飲み始め、食い終わった俺と弟は、一緒にまた家中の探索に向かった。


81:金庫3:04/06/0716:28ID:PjB8UNTL
そしてまた、例の金庫をいじり始めた。
弟の見守る中、程なくして金庫から、カチャ……という音が聞こえた。

「開いたかも……?」

そう思い、扉を開いた。
その瞬間、全身の毛が総毛立った。
なんと、電子レンジほどの大きさの金庫の中には、少し大きめの女の顔が入っていた。
そしてゆらゆらと揺れていた。まるで陽炎のように。
その首の下には、お札みたいなものが大量に敷き詰められていたと思う。
俺はものすごい悲鳴を上げ、弟もすごい勢いで泣き出した。

その悲鳴を聞きつけ、両親や祖父母たちが駆けつけた。
金庫を前に泣き叫ぶ俺たちを見て、じいちゃんが
「まさか開けたのか?」
って聞いてきた。
金庫が開いてんの見りゃ分かりそうなもんだが、なぜか金庫は閉まっていた。閉めた覚えはないんだが。
ばあちゃんが何度かがちゃがちゃやっていたが、もう開くことはなかった。
じいちゃんは怒鳴りつけるでもなく、嗚咽を繰り返す俺を諭すように、
「○○ちゃん、何が見えたのか?ん?」
とやさしく聞いていた。
しかしその表情は、傍目にも分かるほど狼狽していた。

「おっ、女……女!」
と繰り返す俺に、
「どんな顔をしてた?」
と聞く。

「分かんない。でもなんか怒ってた……怒ってた……」

そう、確かに俺が見た女の顔は、明らかに激怒していた。(ように見えた)


82:金庫4:04/06/0716:29ID:PjB8UNTL
じいちゃんは大きく溜息をつくと、ばあちゃんになにやら指示を出した。
ばあちゃんは慌てて玄関から出て行った。
俺は食卓まで連れて行かれ、日本酒と思しきものをコップ一杯飲まされた。
その印象が一番強い。死ぬかと思った。弟も即座に吐いていた。
しかしじいちゃんは、
「□□ちゃん、いい子だから」
って必死に飲ませてた。

その後、戻ってきたばあちゃんに風呂場に連れて行かれ、なぜか弟と共に丸坊主にされた。
そのとき弟は、すでに意識混濁だったが……。

その後、酒の影響もあってか、(というかたぶん酒のせいで)すぐに眠りについた。

翌日、じいちゃんに
「今日はイカ釣りは駄目だな。波が荒くて危険だ」
と言われた。
快晴で風もないように思えたが。
昨夜のことを聞きたかったが、何かとんでもないことをしでかしてしまったように思い、結局誰にも聞けなかった。


83:金庫5:04/06/0716:29ID:PjB8UNTL
やがて大きくなり大学生になった俺は、何年ぶりかにその出来事を思い出し、まず弟に聞いてみた。
すると弟は覚えていなかった。無理もないだろう。弟はそのとき小学一年生だったのだから。
次に両親に聞いてみた。するとそんなことはなかったと言った。
丸坊主にされたじゃん、とか、酒飲まされたじゃん、とか食い下がったが、丸坊主にしたのは地域の野球チームに入るため、酒はあんたが興味本位で勝手に飲んでぶっ倒れた、などと言いくるめられた。

確かに小学三年頃から野球は始めたが、そのために坊主にした覚えはない。
今にして思えば、あの記憶は夢だったのだろうか、とさえ思う。
だが今でも瞼を閉じれば、あのときの恐ろしい女の顔がうっすらと浮かぶ。
あの夏の出来事は、一体なんだったのだろうか……。


88:あなたのうしろに名無しさんが……:04/06/0716:47ID:MqGVFE1M
>>79-83
また、丸坊主か……。
ネタでなければ奴らとの関係を洗ってみたいものだな。
一応聞いておくが、その女の目はどうだった?


92:79:04/06/0717:05ID:PjB8UNTL
>>88
また……?奴らとはなんですか?
記憶が定かならば、女の目は釣りあがっていて、白目を向いていたような気がします。


【出典:死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?75】


なぜ儲かる会社には神棚があるのか
なぜ儲かる会社には神棚があるのか [単行本(ソフトカバー)]