友人のもり君には彼女がいない。もてそうな奴なのに、と不思議に思っていた。
ある日、二人で飲みに行く機会があった。
気になってそのことを訪ねてみると、彼は黙り込んでしまった。
聞いちゃいけなかったかなあ、と思っていたら、
「家に遊びに来ないか」
と誘われた。
気を悪くしてないことにホッっとして、僕は素直に申し出を受けた。
酔っていたから定かではないけれど、アパートに着いたのは夜の1時前くらいだったと思う。
もり君は鍵を開けると、不思議なことを言った。
「中に入ったら内側から鍵を閉めるから、この鍵で外から開けて入ってきて」
怪訝そうな顔をすると、
「内側からかける鍵が壊れていないか調べたい」
と言った。
僕はお安い御用と、彼が中からドアを閉めた後から、鍵を回して部屋に入った。
本当はここで、彼がしようとしていることに気づくべきだった。
295:本当にあった怖い名無し:04/10/1421:19:55ID:BOyHxCgw
僕は部屋に入ると、彼と再び酒を飲みながら話すつもりだった。
しかし、酒が水みたいに感じる。
僕はなんだか、その部屋にいるのが嫌だった。
胸騒ぎがする。胃が浮き上がっているような感覚が止まらない。
こちらの気分が伝わったのか、彼の口調も重い。
僕は部屋に入ってからずっと気になっていることを、彼に軽い調子で尋ねたかった。
299:本当にあった怖い名無し:04/10/1421:28:32ID:BOyHxCgw
だんだん家に帰りたくなってきた。彼の家に来てから30分もしない。
もう真夜中だから電車なんかない。それでも僕は、家に帰りたくてたまらなかった。
それくらい、その家にいるのが嫌だった。
その時、どんな言い訳をしたのかは覚えていない。動揺していたんだと思う。
だから、彼が僕を引き留めないことにも、疑問を覚えなかった。
僕は逃げるように、タクシーで家に帰った。
301:本当にあった怖い名無し:04/10/1421:41:44ID:BOyHxCgw
今思い起こせば、最初の鍵が問題だった。
あれの意味は、僕にドアを鍵で開けさせることにあったのだ。
鍵でドアから入り、最初に出て行くこと。
ついこの前、彼女が僕のアパートに遊びに来た。
そして僕があの晩、頭の中で彼に訴え続けた疑問を口にした。
「玄関のハイヒール、誰よ」
僕は今夜にでも、家に友人を呼ばなければならない。
303名前:本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:04/10/14(木)21:44:29ID:q9VYBYUm
>>301
つまり、ドアを鍵で開けて入って来た奴に、得体の知れない女の幽霊が
とりつくってこと?
305名前:本当にあった怖い名無し[sage]投稿日:04/10/14(木)21:50:20ID:bBEA4Ldx[2/2]
>>303
女とは限らない
コワー